今年のお正月は、食べて寝る典型的な寝正月でしたが、少しだけ「読書」という文化的な活動もしてみました。
そのおかげで、積み上げていた積読の山が少し低くなりましたが、中でも心を奪われたのが、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』です。ラテンアメリカのノーベル賞作家が1967年に発表した本書は、昨年新潮社から文庫版でリバイバル出版され、再び話題となっているので、私も気になっていました。
本書は「マジックリアリズム(魔法的現実主義)」というジャンルに分類されるそうです。ラテンアメリカに暮らす一族の栄枯盛衰を描いた物語の中に、現実では考えられない現象が織り交ぜられる独特の世界観が特徴です。たとえば冒頭、町にやってきたジプシーが魔法の石(磁石)を引きずって往来を歩く場面では、家の中の鍋や火かき棒が棚から転がり落ちてジプシーを追い、釘やネジが材木から抜け出そうともがきます。
この部分から私は一気に物語の世界に引き込まれ、3日で読み終えてしまいました。これほどの「ページターナー(読者を止められなくする本)」に出会ったのは久しぶりです。
ただし、この物語には数十人もの登場人物が登場します。特に、男性はアルカディオやアウレリャノ、女性はレメディオスという名前が頻出し、最初は「こんな嫌がらせみたいな命名は一体…?」と思いました(笑)。ところが、同じ名前が繰り返されることにも実は深い意味がありました。このように、無数の伏線が緻密に張り巡らされ、それが見事に回収されながら物語が広がっていく構成は、さながら美しい蜘蛛の巣のようです。そして最後には、儚くも美しい余韻が残る結末が待っています。
ただし、1967年発刊の作品だけに、差別的な発想や表現がところどころに顔を出すことには弁護士でなくとも少し気になりました。しかも、偶然かどうか、あとがきを書いているのが筒井康隆氏で、彼の「断筆宣言」を思い出したりもしました。
それでも、『百年の孤独』は、読後に「あの場面の黄色い蝶は何を象徴しているのだろう」「氷は何を暗示しているのか」「長雨は何を意味しているのか」と語り合いたくなる、圧倒的な魅力を持った作品です。読んだ後に心の中で長く余韻が続く、そんな一冊でした。